RED-Sを知ってアスリートの疲労骨折を防ごう 寄稿 鳥居俊

 疲労骨折は無月経の女性長距離走選手に多く,低骨密度を呈し摂食障害を合併しやすいために,20世紀には女性選手の三徴(Female Athlete Triad:FAT)1)とまとめられ,トレーニングによる心身への高い負荷が視床下部性の内分泌異常を引き起こすという発生メカニズムが考えられていた。

 しかし最近では,男性選手においても低骨密度や男性ホルモンの低下がみられ,視床下部性の内分泌抑制が男女共通で生じていることが明らかとなった。さらにその背景には,摂食障害という精神心理疾患だけでなく,トレーニングによる消費エネルギーと食事等による摂取エネルギーとのバランスが負に傾いた相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sport:RED-S)が存在するとの考えが提唱されている2)。実際,長距離走選手では今なお疲労骨折が多発している。例を挙げれば,箱根駅伝に出場する8大学の選手339人(回答者:283人)に,2015年4月~2017年3月までの2年間における疲労骨折既往歴を調査したところ,81人(28.6%)が該当し,109件もの疲労骨折が発生していることがわかった3)

参考文献
1)Med Sci Sports Exerc. 1993[PMID:8350697]
2)Br J Sports Med. 2014[PMID:24620037]
3)初雁晶子,他.大学生男子長距離走選手における疲労骨折発生に関する実態調査.日臨スポーツ医会誌.2018;26(3):390-6.

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