オープンサイエンス時代の論文出版 [第5回] 研究評価とオープンアクセス 連載 大隅典子

 これまで4回にわたり,いわゆる研究論文の歴史から電子化された現状までを紹介してきた。本稿では多くの読者が気になるであろう研究評価との関係について取り上げたい。

 研究者人口が少なかった頃は,発表される論文数も少なく,研究者評価は専ら研究コミュニティの中でなされてきた。直接議論を行えば相手がどのくらい自分の専門分野を理解し,正確な根拠や論理的な思考に基づいているかの判断は比較的容易だからだ。けれども研究コミュニティが拡大し,研究分野が細分化され,膨大な論文が出版されるようになるにつれ,評価は難しくなってきた。特に経験値の乏しい分野における研究成果の価値の判断は大きな困難を伴う。

 とはいえ,さまざまなケースで評価は求められる。例えば人事採用や研究費の審査における個人の評価もあれば,研究機関や国ごとの研究レベルを評価することも頻繁に行われる。これらの評価には,成果物である論文の質や量を測ることが必要だ。数値化された指標は客観的であり,専門家でなくても一定の判断材料にできる。本稿では研究機関の研究力評価を中心に論じたい。

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