逆輸出された漢字医学用語 [第5回] 放射線 連載 福武敏夫

 放射線が医学に貢献した程度は言葉に尽くせない。MRI時代になっても単純X線検査はまだまだ重要であり,放射線は検査と治療の両方で大きな役割を担う。一方で,原発事故による放射能漏れも忘れてはならない。

 放射線の研究は1895年のレントゲンによるX線の発見に始まるが,放射線の真の発見は1896年のベクレル(ウラン塩の研究中に)により,そして用語としての「radiation/radioactivity(放射線/放射能)」を命名したのはポーランド人の女性マリア・スクロドフスカ(後のキュリー夫人)である。彼女は「放射線はウラン元素の原子的属性」とした(キュリー夫人著『ピエル・キュリー伝』,白水社:1959)。1903年,放射線の研究でキュリー夫妻とベクレルにノーベル物理学賞が授与された。キュリー夫人は1911年にラジウムとポロニウムの発見でノーベル化学賞も授与され,ノーベル賞を2回受賞した唯一の女性である。筆者はパリを訪れた時,フーコーの振り子で有名なパンテオンの地下にあるキュリー夫妻の墓に詣でることができて感無量であった。

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