逆輸出された漢字医学用語 [第8回] 梅毒 連載 福武敏夫

 筆者は医師になって40年余になるが,その初期に「神経梅毒」の各病型患者に遭遇した。例えば,ふらつきを主訴に受診した強面の50代男性には,運動失調やArgyll Robertson瞳孔などを始め異常所見がみられなかったものの,何か見逃したら大変だと思って2度目の診察でタンデム歩行をしてもらったらこれができず,「脊髄癆」と診断できて治療することができた。80代の農婦でみられた肘関節の無痛性破壊的異常は,両下肢を180度も拡げられる筋緊張低下から「Charcot関節(脊髄癆性関節変形)」と診断できた。大手印刷会社に勤める30代男性の妙な脳症が「進行麻痺」であった時には驚いたが,2回の治療でなんとか治せた。その後も時々遭遇することがあったものの,感染から長期を経て起きる「神経梅毒」は減少している。ところが,梅毒感染自体は本邦で2010年頃から激増しており,10~20年後がとても心配である。

続きはこちら

こちらの記事の内容はお役に立ちましたか?