心の不調に対する「アニメ療法」の可能性 [第10回] アニメ療法の長所と課題 連載 パントー・フランチェスコ

 今回は,「アニメ療法」が現在すでに臨床現場において導入されている他のセラピーと異なる点はもちろん,どういった点に長所があるのか,どういった課題が残っているのかについてお話しします。

 まずセラピーに用いる作品として見た際に,現実に寄せたCG表現や,俳優が演じる実写映画などよりも,架空のキャラクターを含む作品に対して人は感情移入をしやすく,精神的な健康度を高めるパワーを持っているというのが筆者の考えです。その根拠の一つとして,ロボット工学者の森政弘が提唱する「不気味の谷」現象が参考になるでしょう。「不気味の谷」は,人間“らしい”ものを鑑賞する際に人が違和感を持つという心理現象を指します。アニメキャラクターなどの外見を,写実性を高めて人間の見た目に近づけると,私たちはかえって不気味さを感じたり嫌悪感を抱いたりする傾向があるのです。この現象が「谷」と呼ばれるのは,キャラクターをある程度まで人間に近づけることはそれを見た人の好感度を上げるものの,人間に近づきすぎると好感度が急に下がるポイントがあるからです。

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