レジデントのための患者安全エッセンス [第3回] 病院の安全管理部門がインシデントレポートを求める理由がわからない 連載 松村由美
10人に1人が医療によって害を受けている
インシデントレポートは,エラーの告白ではなく,病院システムのほころびや問題点の発見報告であり,医療プロセスの改善戦略の1つです。患者の身体所見や検査を行い異常の有無を調べ,治療するか,経過観察するかを医師が判断するのと同じように,病院の安全管理部門はインシデントレポートをシステムのほころびの結果として表れた「症状」だととらえ,原因に対する「治療」が必要かどうかを判断し行動します。医療者の一人ひとりが,医療にかかわることに人生の意義を感じ,やりがいのある仕事だととらえ,人の命に違いをもたらす(註),という3つの価値観を共有し,インシデントレポートを使いこなせるようになれば,病院のあちこちで質改善のはずみ車が回りだすことでしょう1)。インシデントレポートの提出数が多いチームは,インシデントレポートがシステム改善ツールだと知っています。安心してインシデントを共有できる環境が構築され,チーム内でのコミュニケーションが活発で改善を継続する能力もあると,高いパフォーマンスを発揮できるのです2)。
註:医療は,単に病を治癒したり,制御したりするためだけのものではなく,治らない病であっても,医療を受けるプロセスの中で自身の生について深く考えたり,人生の意味を見いだしたりするきっかけになります。それが「人の命に違いをもたらす」という言葉の意味です。
参考文献・URL
1)クイント・ステューダー.エクセレント・ホスピタル――メディカルコーチングで病院が変わる.ディスカバー・トゥエンティワン;2011.pp11-40.
2)エイミー・C・エドモンドソン.恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす.英治出版;2021.pp11-22.
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