レジデントのための患者安全エッセンス [第6回] 患者に安全な医療を提供するうえで,自己管理もちゃんとしたい 連載 長崎一哉
安全な医療を提供するためのメンタルヘルス対策
近年,COVID-19や働き方改革をきっかけに,バーンアウトに対する注目度が上がっています。バーンアウトとは職業に関連した慢性的かつ過度なストレスにより精神的に消耗した結果,感情が枯渇し,労働意欲が低下した状態です。経験の少ない医療従事者に発症しやすく,国内の研修医の約20%がバーンアウトしていると報告されています1, 2)。
尺度としてはMaslach Burnout Inventory™が有名であり,「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感の低下」の3領域で評価されます。理解しづらいのが「脱人格化」ですが,これはヒトを1人の人格としてではなくモノとして扱ってしまう傾向を指し,相手に対するネガティブな感情や批判的な言動として現れてくるものです。仕事がうまくいかない理由を自分ではなく他者に求めることによって起こる,自衛的な行動傾向だと考えられています。
バーンアウトは,うつや自殺などの精神的な問題,そして研修離脱や離職といった研修医自身への悪影響が起こり得ます。また,担当患者の医療の質や安全性に影響することが指摘されており3),注意力の低下や,コミュニケーション不足に起因するエラーが発生しやすくなります。米国医師を対象とした調査によると,バーンアウトしている医師は医療過誤をオッズ比2.2で経験しやすいと報告されていました4)。また,国内の研修医を対象とした調査においても,インシデントを多く経験した研修医はより多くバーンアウトしています(オッズ比2.7)1)。すなわち質の高い安全な医療を提供するには,メンタルヘルス対策を行うことが重要と言えるでしょう。
参考文献
1)Intern Med. 2021[PMID:33281158]
2)Sci Rep. 2022[PMID:35739229]
3)J Intern Med. 2018[PMID:29505159]
4)Mayo Clin Proc. 2018[PMID:30001832]
こちらの記事の内容はお役に立ちましたか?
本ページの「役立った!」機能をお使いいただくには
「有料記事の購入」「アクセスコードの登録」などを行い
記事の閲覧権限を得ていただくことが必要です。
※記事により、指定の医療関係者(医師、看護師、コメディカルなど)以外は
お使いいただけない場合もございますのでご了承ください。