応用倫理学入門 [第9回] 脳神経科学の倫理――脳への直接的な介入をする新技術が提起する課題 連載 澤井 努

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 近年,脳神経科学分野における急速な技術革新により,脳と外部機器を直接接続するブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Machine Interface:BMI)や,深部脳刺激(Deep Brain Stimulation:DBS)などが,実際の臨床現場で応用され始めています。これらの技術は,難治性の運動障害や意思疎通に困難を抱える患者に対し,新たな治療や生活支援を提供する可能性を秘めています。その一方で,脳を直接的に操作・制御するこれらの技術は,プライバシーの保護,自己同一性や人格の尊厳の維持,治療適応範囲の拡大,インフォームド・コンセント(IC)の在り方など,従来の医療とは質的に異なる倫理的課題も提起しています。テクノロジーの利便性を最大限に活用しつつも,人間の尊厳を守り,公平で安全な利用を保証する視点が,医療従事者には求められます。本稿では,BMIとDBSに焦点を当てながら,脳神経科学技術(ニューロテクノロジー)の特徴を整理するとともに,それらに伴う主な倫理的課題を概観します。

 

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