SGLT2阻害薬は,腎臓でのブドウ糖再吸収を抑え,尿中へ糖を排泄させることで血糖を下げる薬です。1日1回内服で済み,単剤では低血糖も少なく,体重も少し減らします。薬価は少し高いもののメリットが多いのが特徴です。
2014年に日本で発売された当初は,「尿に糖を出して大丈夫なのか」「脱水や感染症の併発が増えるのではないか」と慎重な見方も少なくありませんでした。しかし,その後のEMPA-REG OUTCOMEをはじめとした大規模臨床試験で心血管イベント・心不全入院の発生抑制や腎保護効果が次々と明確になり,評価が大きく変わりました。現在のSGLT2阻害薬は,単なる糖尿病治療薬ではなく,慢性腎臓病や心不全の予後改善まで期待できる“心腎保護薬”として位置づけられています。実際に米国糖尿病学会(ADA)1)や国際腎臓病学会(KDIGO)2)などの海外ガイドライン,日本の慢性腎臓病(CKD)ガイドライン3)でも,心不全やCKDを合併する患者では早期導入が推奨されるまでになっています。
一方で,全ての患者に一律で使う薬でもありません。脱水リスクの高い高齢者,摂食不良,フレイル,ケトアシドーシスリスクが高い症例では慎重な判断が必要です。SGLT2阻害薬は,「誰にでも使う薬」ではなく,「効果の恩恵が大きい患者に早めに届けたい薬」と考えると整理しやすいと思います。