臨床試験で被験薬の本当の効果を科学的に証明するためにはプラセボ対照群が必要不可欠であるが、対象となる研究参加者は「最善の治療を受ける権利」を持つ患者であるため、倫理的な永遠の「プラセボジレンマ」が生じる。プラセボを使用する際には、以下の倫理的側面を厳密に考慮する必要がある。
第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント
7 研究デザイン
7-7 プラセボ(placebo)
7-7-5 臨床薬効評価でプラセボを使用する際の考慮すべき倫理的側面
中野 重行
1.研究参加者を保護する試験デザインの工夫
プラセボ使用による研究参加者へのリスクを最小限に抑えるため、事前の安全性を確保するための対策が必要である。
1)早期回避と救済治療(レスキュー)
病態の悪化など、安全基準を超える懸念が生じた際には速やかに試験を中止し、プラセボから他の有効な治療法へと切り替えるというレスキューの手順をあらかじめ計画に盛り込むという試験デザイン上の工夫である。
2)上乗せデザイン
標準薬をベースとして投与した上で、被験薬かプラセボを追加して比較する方法を取り入れることも試験デザイン上の工夫である。
2.研究参加者に対する十分なインフォームド・コンセント
研究参加者に対して、プラセボが割り当てられる確率や、それに伴うリスク、プラセボの役割などを分かりやすく説明し、十分に納得したうえでの同意(インフォームド・コンセント)を得ることが不可欠である。
3.研究参加者の安全性確保のための体制作り
科学的データを得る「集団の論理」よりも、研究参加者個人の安全と人権を守る「個の論理」をつねに優先し、臨床研究チーム全員が研究参加者のリスクを背負う覚悟を持って体制づくりをすることが重要である。
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