第2章 臨床研究の倫理性 
2 インフォームドコンセント(アセント) 
乾 直輝

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1.インフォームド・コンセントの誕生から

日本医師会の生命倫理懇談会での検討により、1990年に「説明と同意」についての報告が出され、医療のなかにインフォームド・コンセントを根づかせることで患者と医師の信頼関係を構築することが提唱された。その後、旧厚生省の「インフォームド・コンセントの在り方に関する検討会」は1995年に報告書をまとめ、「患者も医療従事者も、ともに元気が出るような新しい関係を作るいわば鎹(かすがい)としてインフォームド・コンセントを位置付けること」をコンセプトに、医療従事者、患者、さらに制度面への提言を示した。そのなかで、遺伝子治療や新薬の治験には、文書による「説明と同意」が必須であるとした。また、わが国におけるインフォームド・コンセントは、米国で反省されている患者の権利の主張と医療従事者の責任回避という対立的側面で捉えるべきではなく、より良い医療環境を築くという基本的な考え方に基づくものでなければならないとしている。現在では、電磁的方法によるインフォームド・コンセント(e-Consent)の取得も可能になっている。

 

2.インフォームド・コンセントとは

インフォームド・コンセントとは「能力ある個人が医師から十分な説明を受け、その内容を実質的に理解し、その内容を考慮したのち、他人からの強制、不当な威圧、もしくは誘因または脅迫なしに、決意し、本人の自由意思により、与えられる同意」をいう。治験や臨床試験においては、インフォームド・コンセントに基づき、被験者の自由意思に基づく同意を文書で得ることが原則である。

 

3. 構成要素

インフォームド・コンセントの構成要素としては、開示、理解、自発性、能力、同意が挙げられる。
開示については、個々の治験・臨床試験ごとに所定の内容を含む説明文書を作成し、それに基づいて担当医師が被験者に説明する。説明文書は、あらかじめ倫理審査委員会の承認を受けるとともに、その内容が常に最新の情報を反映するように努めなければならない。
GCPや人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針では、記載すべき内容を定めている(表2-2-1)。

表2-2-1 説明文書に記載する内容.
人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針で示されている説明文書に記載する内容を簡略化して示す.

 

被験者に対しては、臨床研究の目的や方法など一般的な内容に加え、資金源、起こりうる利益相反(conflict of interest:COI)、研究者および関連組織との関係、補償の内容などについて十分に説明する必要がある。

被験者の十全な理解を得ることは容易ではない。説明にあたっては、被験者の十分な理解が得られるように、平易な言葉を用いる。単に記載事項を説明するのではなく、時間をかけて説明し、質問に答えながら被験者の理解を深める努力が求められる。しかし、現実の医療現場では時間的、人的余裕が十分でない場合も多い。このため、インフォームド・コンセントの場では、CRC(Clinical Research Coordinator)が医師を補完し、被験者の理解を支援する重要な役割を担っている。また、治験や臨床研究の意義についての社会的な啓蒙も重要である。

インフォームド・コンセントにおける能力とは、被験者が治験の意義を理解し、自らの利害を勘案して判断し、その意思を自由に表明できる能力をいう。このため、同意能力を欠く患者(精神障害患者、意識障害患者、未成年者など)は、治験の目的上やむを得ない場合を除き、原則として被験者としないか、または法定代理人の同意を得る。ただし、被験者が説明を理解できる能力を有する場合には、その範囲で被験者本人の賛意(同意)も得るべきである。小児患者を対象とした試験において、法定代理人の同意に加え、試験に実際に参加する小児本人の理解度や年齢に応じて分かりやすく説明し、その内容について本人の合意・納得を得ることを「インフォームド・アセント」と呼ぶ。

    

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