1.研究者等の責務
ヒトを対象とする臨床研究において、科学的かつ倫理的に研究を計画、実施するために研究者が負う責務は極めて大きい。過去に行われたさまざまな非倫理的研究への反省を踏まえ、研究者等が担うべき責務が制度的に規定されている。GCP(Good Clinical Practice)第42条には治験責任医師の要件として、①治験を適正に行うことができる十分な教育及び訓練を受け、かつ、十分な臨床経験を有すること、②治験実施計画書、治験薬概要書及び治験使用薬の適切な使用方法に精通していること、③治験を行うのに必要な時間的余裕を有することが示されている。臨床研究に対する国民の信頼を確保・向上させるために、治験責任医師のみならず、臨床研究に携わるすべての医療従事者および研究者がこれらの要件を踏まえ、細心の注意を払って臨床研究に取り組む必要がある。
臨床研究において最も重要なことは、身体的にも精神的にも被験者に害を与えないことである。ヘルシンキ宣言にも「ヒトを対象とする医学研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない」と明記されている。研究者は、被験者の生命、プライバシーや尊厳を守ることを最優先とし、これに加えて、インフォームド・コンセントの適切な実施、臨床研究に関する倫理および実施に必要な知識について十分な教育・研修を受けることが求められる。
研究は、現在または将来の患者の利益に資するものでなければならない。基礎研究も最終的には患者や社会の利益を目的とするが、臨床研究においては、より具体的かつ現実的な課題に取リ組み、その成果を患者や医療現場に還元し、診療や医療技術の改良につなげることが求められる。研究立案の段階から、この点を十分に踏まえて計画する必要がある。
また、研究者の責務として、予想した結果が得られたか否かにかかわらず、研究結果を公表することが重要である。臨床研究には、いわゆるnegative studyは存在せず、たとえ当初の仮説と異なる結果であっても、それ自体が重要なエビデンスであることを認識しなければならない。
2. 研究責任者の責務
研究責任者は、臨床研究の計画および実施の責任者として多くの責務を担う。特に、インフォームド・コンセントの適切な実施、被験者保護、安全性と信頼性の確保、個人情報の保護を重視する姿勢が求められる。
介入を伴い侵襲性を有する臨床研究は、あらかじめ、研究内容を公開されたデータベースに登録する必要がある。図2-3-1に示す臨床研究等提出・公開システム(Japan Registry of Clinical Trials : jRCT)は、日本で実施されている治験や特定臨床研究を含む臨床研究の情報が掲載されている公的なデータベースである。
図2-3-1 web上で登録する臨床研究等提出・公開システム (jRCT).
治験や特定臨床研究を実施する場合には、所定の臨床研究情報をjRCTに登録・公表することが義務づけられている。このほか、大学病院医療情報ネットワーク(University Hospital Medical Information Network : UMIN)が運用する臨床試験登録システムも利用されている。
さらに、臨床試験においては、重篤な有害事象の報告や年1回の試験進捗状況などの報告が義務づけられている。