第3章 臨床研究に関わる法規制、指針等 
2 保険制度 
2-1 保険診療制度 
松平 真悟

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わが国の健康保険制度は、「国民皆保険」「現物給付」「フリーアクセス」という三つの基本的特徴により支えられており、これらが相互に作用することで、国民に対する公平かつ効率的な医療保障を実現している。本制度は主として健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)および高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)などに基づいて構築されており、以下で紹介する。

 

第一に、「国民皆保険」である。これは、すべての国民が何らかの公的医療保険制度に加入することを原則とする仕組みであり、1961年(昭和36年)に全国民への適用が達成された。被用者は健康保険(全国健康保険協会管掌健康保険や健康保険組合)に加入し、自営業者などは国民健康保険(国民健康保険組合や市町村国保など)に加入する。また、75歳以上の高齢者などについては高齢者の医療の確保に関する法律に基づく後期高齢者医療制度が適用される。 このような多保険者体制の下にでも、保険給付の内容や患者負担割合は法令により概ね統一されており、所得や職業にかかわらず一定水準の医療が保障される点が特徴である。厚生労働省は「我が国の医療保険制度について」において、「国民皆保険」を「誰もが必要な医療を受けられる仕組み」と位置づけている。(参考1)

 

第二に、「現物給付」である。これは、被保険者が医療機関において医療サービスそのものの提供を受ける仕組みを指す。健康保険法第63条は「療養の給付」として診察、薬剤または治療材料の支給、処置・手術その他の治療などを規定しており、被保険者はこれらの医療行為を現物として受けることができる。患者は原則として医療費の一部を自己負担し(通常は1~3割)、残額は保険者から医療機関に支払われる。この支払いは診療報酬点数表に基づき全国一律の公定価格で行われる点に特徴があり、これにより地域差や医療機関間の価格差を抑制しつつ、医療の質とアクセスの均てん化が図られている。また、「現物給付」を基本とすることで、患者が高額な医療費を一時的に全額負担する必要がなく、受療の障壁を低減する効果も有している。

 

第三に、「フリーアクセス」である。これは、患者が医療機関や診療科を自由に選択し受診できる仕組みを意味する。日本では医療機関の機能分化が進められているものの、制度上は患者の受診先選択の自由が広く認められている。この点は医療への迅速なアクセスを可能とし、患者の利便性を高める重要な要素である。一方で、大病院への外来患者集中や医療資源の非効率な利用といった課題も指摘されている。このため近年では、紹介状なし受診時の定額負担(いわゆる選定療養)などを通じて、かかりつけ医機能の強化と医療提供体制の適正化が図られている。

 

以上の三本柱は、それぞれ独立した特徴であると同時に、相互補完的な関係にある。すなわち、「国民皆保険」によりすべての国民に保険加入が保障され、「現物給付」により実際の医療サービスが比較的低い自己負担で提供され、さらに「フリーアクセス」により必要な医療機関へ迅速に到達することが可能となる。この組み合わせにより、日本の医療制度は高い受療率と平均寿命の延伸など、良好な健康指標を達成してきたと評価されている。(参考2)

さらに、わが国の医療保険制度は高額療養費制度などのセーフティネットも備えている。これは医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みであり、家計への過度な負担を軽減する役割を果たしている。また、出産育児一時金や傷病手当金などの現金給付も制度の重要な構成要素である。

 

参考文献(法令・厚労省資料)

(参考1)厚生労働省ホームページ「我が国の医療保険について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html(最終アクセス:2026年3月20日)

(参考2)日本医師会ホームページ「世界に誇れる日本の医療保険制度」https://www.med.or.jp/people/info/kaifo/(最終アクセス:2026年3月20日)

・健康保険法(大正11年法律第70号)
・国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
・保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)
・高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)
・厚生労働省発「未承認又は適応外の医薬品等を用いる特定臨床研究における保険診療について」(令和7年7月9日)

    

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