第5回 聖地巡礼:こじつけに近いけど・・・ 
中村 好一(宇都宮市保健所)

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■中毒学
『臨床中毒学 第2版』(上條吉人,医学書院,2023)という書籍注1があります。総ページ数696ページ,定価14,300円というところから,内容の充実度を推測していただきたいのですが,これを1人の著者で執筆したところがすごい!(普通ならば,数十人単位での共同執筆でしょう) 加えて,巻末付録の「毒物を扱った推理小説ガイド」が面白いです。推理小説マニアでもある筆者注2にとっては貴重な資料で,例えば今でもフェアかアンフェアかの論争があるアガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』が最初に「バルビツール酸類」として取り上げられています。この付録に不満があるとすれば,青酸化合物を使った毒殺を扱った鮎川哲也の代表作『黒いトランク』注3が「シアン化物」のなかで取り上げられていない点です注4

上條先生はジェネラリストNAVIで「臨床で役立つ生物毒図鑑」を連載されていますね。  

履歴書の「趣味」欄に「読書」「旅行」「音楽鑑賞」と書くと「無趣味」と見なされますが(誰でもやるので),筆者の場合は読書=推理小説,旅行=鉄道,音楽鑑賞=クラシックで,音楽鑑賞以外は人に威張って言えるものではありませんが,無趣味でもありません。  

KADOKAWA,光文社,東京創元社の各文庫で読むことができます。ただし,光文社文庫は初版の復刻で,決定版ではありません。最初に読むとすれば,東京創元社の創元推理文庫が無難でしょう。  

鮎川作品の別の長編小説『準急ながら』でも1つの殺人は青酸化合物によるものですが,やはり取り上げられていません。 

 

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