第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
2 研究チーム 
2-1 研究チーム 
中野 重行

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1.臨床研究チームの基本概念

臨床研究は、医師や研究者が単独で完結するものではなく、多くの研究者・研究協力者や臨床研究支援スタッフ(臨床研究コーディネーター[Clinical Research Coordinator : CRC]など)といった多職種が関与してはじめて成立する領域である。ここで最も重要なことは、「臨床研究チーム」というコンセプトにおいて、研究参加者(被験者)となる患者や健常者を単なる研究対象としてではなく、チームの「パートナー」として捉えるということである。このように、医療者と市民が一緒になってより良き医療を構築していく「市民参加型医療」のひとつとして、「臨床研究」を位置づけることが重要である。

つまり、臨床研究は研究者と研究参加者の共同作業であり、治験段階の臨床試験に参加する研究参加者は「創薬ボランティア」、市販後医薬品の臨床試験に参加する研究参加者は「育薬ボランティア」として、「創薬育薬医療チーム」として機能する「臨床研究チーム」の重要な一員である。

2.臨床研究チームにおける主要なプレイヤーと臨床コーディネーター(CRC)の役割(図1)


図1 臨床研究チーム(治験・臨床試験チーム).

 

「創薬育薬医療チーム」として機能する「臨床研究チーム」においては、各プレイヤーの役割を明確にし、研究目的を全体で共有することが重要である。まず、研究責任医師はチームのリーダーとして、研究計画を可視化し、各メンバーに役割と責任を明確に伝える責務を負う。そして、実務の要となるのが臨床研究コーディネーター(CRC)である。臨床試験は基本的に「研究参加者(一般市民)」「研究責任(分担)医師」「治験依頼者(製薬企業など)」の三者の協力による「臨床試験の基本三角形」で成り立っている。CRCはこの基本三角形の中央に入り、研究参加者のケア、研究責任医師・研究分担医師の支援、そして治験依頼者側との対応(モニタリングや監査の窓口など)の役割を行い、臨床試験全体が円滑に進むように調整するコーディネートの役割を担っている。

 

3. 研究チームに求められるバランス感覚

臨床研究の現場は、目の前の個々の患者の命を守り治療を最優先する「医療の論理」と、将来の患者が恩恵を受ける信頼性の高いデータを集める「研究の論理」がコンフリクトを起こす場でもある。二つの論理が働いている世界をまたいで仕事をする臨床研究者(医師)とCRCには、この二つの論理のバランスを上手にとる能力が求められている。さらに、科学的な質の高いデータを担保するための「厳密さを求める態度」(理性が主として働く)と、患者やスタッフとのコミュニケーションにおいて柔軟に対応する「柔軟さを求める態度」(感性が主として働く)という、2つのベクトルを共存させバランスをとる感覚がプロフェッショナルとして重要となる。

 

4.成功する研究チームの条件とResearch Integrity

質の高い信頼できるエビデンスを創出するには、多職種のメンバーがチーム意識を持ち、互いの守備範囲や得意技を認識した上での「協働」が成り立っていることが不可欠である。チーム・組織が真に機能するためには、リーダーがビジョンや理念をスタッフに繰り返し語りかけ、浸透させることが重要である。また、データ改ざんなどの研究不正を防ぎ、臨床試験の信頼性を確保するためには、研究チームのスタッフを孤立させずに互いにカバーし合うコミュニケーションを主体とした「環境要因」の軸と、誠実に社会の期待に応えようとする個人の心構えである「Research Integrity」の軸の両者を、高めていく必要がある。

臨床研究チームとは、単なる業務の分担ではなく、共通の理念のもとに研究参加者を含めたチーム全体が一体となり、未来の医療の質を向上させるために協働する組織であるといえる。

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