第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
4 医薬品の開発(治験) 
4-3 臨床試験に必要な非臨床試験 
乾 直輝

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ヒトを対象とする臨床試験においては、非臨床試験および先行する臨床試験の結果から、試験で用いる治験薬や医療機器が安全であることが示されなければならない。臨床試験においては、有効性よりも安全性の確保が重要であり、医薬品・医療機器開発における非臨床試験の意義は、科学的根拠として臨床試験の実施を支持できる安全性情報、データを提示することである。ヒトのデータが存在しない第Ⅰ相の段階では試験を立案するうえで非臨床試験データが最も重要なデータとなる。

非臨床試験は、製剤学的試験、毒性試験、薬効薬理試験、安全性薬理試験、薬物動態試験(トキシコキネティクス を含む)、局所刺激性試験などで、ICH M3(R2)ガイドライン、バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価については、ICH S6ガイドラインに基づく。これらガイドラインは、動物試験の削減、改良、代替を意識して作成されている。

1.製剤学的試験

合成、抽出、バイオテクノロジーなどの技術によって創製あるいは発見された新規化合物は、物理化学的特性、安全性、規格など、化合物の品質が検討される。「治験薬の製造管理及び品質管理基準及び治験薬の製造施設の構造設備基準(治験薬GMP:Good Manufacturing Practice)」に基づいて行われる。

 

2.毒性試験

毒性試験には一般毒性試験、特殊毒性試験があり、「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準(Good Laboratory Practice : GLP)」に基づく。

 1)一般毒性試験

被験物質を哺乳動物に投与したときに生ずる毒性変化を用量および時間との関連で把握する。単回投与毒性試験と反復投与毒性試験がある。

2)特殊毒性試験

(1) 遺伝毒性試験

遺伝的な傷害を引き起こす物質を検出する。遺伝毒性試験の標準的バッテリーとして、従来の細菌を用いる遺伝子突然変異試験、げっ歯類造血細胞を用いる染色体損傷のためのin vivo試験(小核試験)、哺乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験とマウスリンフォーマを使用する試験がある。

(2)がん原性試験

ヒトでの発がん性リスクを評価するために行われる。

(3)生殖発生毒性試験

生殖発生の過程において、何らかの悪影響を誘発しないか、ヒトの生殖発生に対する安全性(危険性)を評価する。生殖発生毒性試験は対象とする被験者集団に応じて適切に実施する必要がある。

(4)局所刺激性試験

注射薬、貼付剤、点眼薬などで必要となる。

(5)免疫毒性試験

免疫毒性の有無の検討に加えて、標的免疫担当細胞の特定、免疫毒性の可逆性の確認、免疫毒性発現機序の解明のために行われる。

(6) 抗原性試験

(7) 依存性試験

(8) 光毒性試験

 

3.薬理試験

薬理試験は効力を裏づける薬効薬理試験と薬効薬理作用以外の副次的薬理試験(一般薬理試験)および安全性薬理試験の3つに分類される。

 1)薬効薬理試験

薬効薬理試験は、正常動物における作用と病態モデル動物に対する作用を評価する。さらにin vitro、すなわち細胞レベル、細胞下レベルの生化学的評価法がある。薬物の暴露濃度と薬効との関係より、作用機序についても言及する。

2)安全性薬理試験

安全性薬理試験とは治療用量およびそれ以上の暴露に関連した被験物質の生理機能に対する潜在的な望ましくない薬力学的作用を検討する試験である。安全性薬理コアバッテリーは生命機能(心血管系、呼吸器系、中枢神経系の機能)に対する作用を評価する。

 

4.薬物動態試験

開発医薬品の動物における吸収、分布、代謝、排泄についての情報はヒトでの臨床試験を計画する際に重要なデータとなる。薬物動態試験から得られる情報には、薬物動態学的パラメータ、吸収や消失の線形性の有無、生体内利用率、消失経路、代謝経路、薬物代謝酵素の同定、酵素誘導・阻害の有無、活性代謝物の存在、組織への分布、組織中濃度の測定、胎児移行性、血漿蛋白結合、雄雌差など有効性および安全性を推測するものがある。

 

5.非臨床試験と臨床試験

ヒトを対象とする臨床試験において、非臨床試験で得られたデータはどのような意味を持つのであろうか。ヒトと非臨床試験で用いられる動物には明らかに種差が存在し、投与量も一般的には動物で量が多い。非臨床試験で認めた薬物の反応とヒトでの反応には違いがあるとの認識が必要である。薬物動態の違いは、吸収、タンパク結合能などによる分布の違い、種差によって大きく異なる酵素の働きによる代謝が影響する。また、薬力学に影響する受容体感受性が違う可能性もある。このような非確実性を基盤とする医薬品開発だからこそ、複数種の動物で繰り返し、長期間にわたる安全性評価が重要と言えよう。

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