第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
7 研究デザイン 
7-4 観察研究 
志賀 剛

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観察研究は、介入を行わずに、ある病院や地域にいる患者を観察し、その結果を分析することで、疾病の病態、特徴、要因、背景、予後などを明らかにする研究デザインである(図1)。


図1 観察研究.


臨床研究において仮説の生成、つまりクリニカルクエスチョンを研究にしていく重要なステップでもある。

1.観察研究の種類

観察研究には、主に以下の種類がある(表1)。

表1 観察研究のデザイン.

症例集積研究(case series study):複数の症例を収集し、その特徴を記述する研究である。
横断研究(cross-sectional study): ある一時点における、特定の集団における疾病の頻度や関連する要因を調査する研究である。
縦断研究(longitudinal study): 特定の集団を一定期間追跡し、疾病の発生や進行、予後などを観察する研究である。
症例対照研究(case-control study): 疾病を持つ患者(症例)と、疾病を持たない対照(コントロール)を比較し、過去の暴露要因の有無を調査する研究である。
コホート研究: 特定の暴露要因を持つ集団と、持たない集団を一定期間追跡し、疾病の発生や進行、予後などを観察する研究である。方法として前向き研究(研究開始時点から将来に向かって追跡する研究)と後ろ向き研究(過去のデータに基づいて追跡する研究)に分けられる。

 

2.利点

日常診療のデータは、実際の医療現場を反映しており、一般化しやすい結果が得られる可能性がある。また、臨床試験に比べて、コストと時間を節約できる。介入を行わないため、倫理的な問題が少ない場合がある。倫理面では研究データとして個人情報の取扱いが重要となる。

 

3.欠点

日常診療と臨床試験は異なり、何か意図的あるいは非意図的であっても研究を意識した治療が行われると、介入になってしまう可能性がある。また日常診療では、観察項目がばらつく可能性がある。担当医の判断で検査を行ったり、行わなかったりするので観察データの欠損値が多い。また、患者の観察期間にも限界がある。転院や転医してしまうと観察が終了してしまう。これを解決するには前向き観察研究が望ましい。前向き観察研究では、基本的に参加者の同意が必要であるが、定期的な観察項目の確認、追跡が可能となる。ただし、同意を得た例での調査になるため、全例での結果とは異なる可能性がある。(表2
表2 患者のコホート研究.

 

4.観察研究から暴露の有無で比較する難しさ

観察研究では、暴露の有無で比較することが難しい。例えば、A薬を使っていた患者と使っていなかった患者を比較する場合、医師の裁量によってA薬が投与されているため、患者の背景が異なる可能性がある(図2)。

図2 観察研究から暴露の有無で比較する?

 

このバイアスを調整する方法としてPropensity Score Matchingがある。Propensity Scoreは、患者の背景因子に基づいて、ある治療を受ける確率を算出したものでPropensity Scoreをマッチングさせることで、背景因子が似た患者同士を比較することができる。しかし、あくまで両薬を使った人が重なった部分のみであり、重症者や軽症者(つまり重症にA薬を使い、検証には使わないなどの担当医の思考も働くため)が省かれ、本来の効果が検出できないことがある(図3)。


図3 観察研究のデータから比較する難しさ.

 

また背景を揃えたとしても限界があり、潜在的な交絡因子を調整することはできないため誤った結果が出る可能性もある。このため、あくまで仮説の生成であり、最終的には検証的研究で確かめなくてはいけない。

観察研究は、日常診療のデータから多くの知見を得ることができる重要な研究デザインである。しかし、バイアスなどの課題もあるため、研究デザインの選択やデータ分析には注意が必要である。

 

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