第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
7 研究デザイン 
7-5 ランダム化割付:内的妥当性の確保 
志賀 剛

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臨床研究において、新しい治療法や介入の効果を正しく評価することは極めて重要である。しかし、単に新しい治療法を受けたグループと従来の治療法を受けたグループを比較するだけでは、その効果が本当に治療によるものなのか、それとも患者背景の違いなど他の要因によるものなのかを区別できない。ここで重要となるのが、ランダム化比較試験(RCT)と、その中核をなすランダム化割付(Random Allocation)である。ランダム化割付は、研究の内的妥当性(Internal Validity)、すなわち「得られた結果が、介入によって真にもたらされたものである」という信頼性を担保するための最も強力な手法である。

1.ランダム化割付と内的妥当性の関係(図1

図1 ランダム化割付と内的妥当性の確保.

 

1) 対象患者集団から参加者へ

まず、研究の対象となる特定の疾患を持つ患者集団(母集団)から、研究への参加に同意し、選択基準を満たした患者が選抜される。このプロセスを「サンプリング」という。

2) ランダム化割付

選抜された参加者は、ランダム化割付によって、介入群(新しい治療法など)と対照群(従来の治療法やプラセボなど)に、完全に偶然の力(くじ引きのような方法)で振り分けられる。このランダム化によって、2つのグループは、年齢、性別、病状の重症度といった既知の要因だけでなく、まだ知られていない未知の要因についても、統計的に均質(バランスが取れた状態)になる。

3) 結果の比較

両群の背景因子が均質であるため、試験終了後に見られた結果(アウトカム)の差は、背景の違いではなく、介入そのものの効果であると結論付けることができる。これが内的妥当性の確保である。

 

2.ランダム化だけでは不十分? 潜むバイアスとその対策

RCTは最も信頼性の高い研究デザインとされているが、適切に実施されなければバイアス(偏り)が入り込み、結果を歪めてしまう可能性がある。

1) 選択バイアス(Selection Bias)

ランダム化の前段階で、医師が「この患者はプラセボ群(対照群)に入ると可哀想だ」と判断したり、特定の患者を意図的に除外したりすることで、参加者の質に偏りが生じる。

2) 割付の隠蔵(Allocation Concealment)の欠如

ランダム化の順番や、次の患者がどちらの群に割り振られるかが、割付を行う医師や研究者に事前に分かってしまう状態である。これが守られないと、医師が次の割付を知って、意図的に特定の患者を介入群(または対照群)に入れようとするバイアスが生じる。

3) 観察者バイアス(Observer Bias)

医師や評価者が、参加者がどちらの群に属しているかを知っていることで、無意識に評価を甘くしたり厳しくしたりすることになる。

 

3.真の内的妥当性を確保するために

まず選択バイアスを避けることが不可欠である。ランダム化は、ベースライン時での背景情報の不均衡を避け、介入意図を排除することが前提である。次に、割付けの隠蔵(allocation concealment)の徹底である。ランダム化の手順や具体的な割付方法が、実行者や参加者に事前に知られてはいけない。

RCTにおいて、参加者を各群に割り付ける方法には、大きく分けて「静的割付け」と「動的割付け」の2つがある。静的割付け(Static Allocation)は試験開始前に、あらかじめ全ての参加者の割付順序(割付リスト)を決定しておく方法で、実施が容易であるが、参加者数が少ないと、偶然によって群間に不均衡が生じる可能性がある。動的割付け(Dynamic Allocation)は試験進行中に、それまでに割り付けられた参加者の情報(背景因子や群の人数)を考慮して、次の参加者の割付確率を動的に変化させる方法で専用のシステムが必要となるが、常に群間のバランスを保つことができる。

 

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