第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
7 研究デザイン 
7-6 エンドポイント 
志賀 剛

ブックマーク登録

エンドポイントとは、その語源である「終点」が示す通り、研究(試験)のゴールとなる結果の指標のことであり、日本語では評価項目という。これは、新しい治療法や介入が参加者にどのような影響をもたらしたかを客観的に評価するためのものさしとなる。

一方、観察研究や一部の臨床試験では、エンドポイントの代わりにアウトカムという言葉が使われる。アウトカムは、日本語で臨床転帰、つまり「病状の経過や最終的な結果」を意味する。具体的には「死亡」「心血管イベント」「入院」といった重篤な事象が中心となるが、研究目的によっては症状の有無やQOL(生活の質)の指標などが含まれることもある。

1. 役割による分類:主要と副次的

1) 主要評価項目/一次エンドポイント (Primary Endpoint)

その研究で一番知りたいことであり、研究の核となる評価項目である。例えば、心不全治療のゴールは生命予後の改善であるため、新しい心不全治療薬の効果を調べる研究なら、「死亡」や「心不全入院」が主要評価項目となる。 研究計画は、この主要評価項目を検討するために設計される。原則として、1つの研究につき1つだけ設定する。

2) 副次的評価項目/二次エンドポイント (Secondary Endpoint)

主要評価項目を補完する目的で設定される評価項目である。主要評価項目ほど重要ではないが、治療法の多角的な評価に役立つ。例えば、上記の心不全研究であれば、「QOL(生活の質)の変化」や「心機能の変化」などが挙げられる。

3) その他の評価項目(臨床試験)

探索的評価項目(Exploratory Endpoint):将来の研究のヒントを得るため、予備的に設定される項目。主要・副次項目以外の新たな知見を見つけるために用いられる。
安全性評価項目(Safety Endpoint):副作用や異常な検査値など、介入による不利益を評価する項目。どんなに効果があっても、安全性が確認できなければ治療法としては認められない。

 

2.臨床的な意味による分類:真と代替

1) 真のエンドポイント (True Endpoint)

患者の「最終的な健康状態」を直接的に反映する項目である。具体的には、死亡、心筋梗塞や脳卒中の発症などの主要な臨床イベント、ならびにQOLスコアなど医療のゴールに臨床的に直接関わる事象または状態を指標とする。臨床的には最も意味がある一方で、主要イベントの発現までに時間を要したり、必要な参加者数が多くなったりするなどの課題がある。

2) 代替エンドポイント (Surrogate Endpoint)

真のエンドポイントの身代わりとなる項目である。真のエンドポイントと強い相関があり、介入によって変化することが科学的に証明されている指標(バイオマーカーなど)が選ばれる。 例えば、高血圧治療薬の研究において、真のエンドポイントである「脳卒中の発症」を評価するには時間がかかる。そこで、脳卒中のリスク因子である「血圧値」を代替エンドポイントとして評価すれば、測定が容易で、短期間で結果が出るため、新薬の開発段階(早期の有効性評価)などで用いられる。

 

3.客観性の程度による分類

ソフトエンドポイントは参加者(患者)や医師の判断・意思の影響を受けやすい指標(例:QOL、狭心症、一過性脳虚血発作、入院の要否)である。一方、ハードエンドポイントは判断が入り込む余地の少ない客観的事象(例:死亡、心筋梗塞、脳卒中、検査値)である。ソフトエンドポイントを採用する場合は、事前に評価基準や判定基準を明確化し、原則として非盲検試験では用いない(用いるなら二重盲検等により偏りを抑える)。

 

4.なぜエンドポイントが大事か

臨床研究において、エンドポイントは研究の「命」とも言える重要な要素である。研究の目的を明確にし、最も適切でシンプルな主要評価項目を決める。それを具体的に、客観的に測定できる指標(発現頻度、スコア、検査値など)で定義する。このステップをしっかりと踏むことが、信頼できる、価値のある臨床研究への第一歩となる。

こちらの記事の内容はお役に立ちましたか?