第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
7 研究デザイン 
7-7 プラセボ(placebo) 
7-7-3 プラセボ投与時に改善(変化、増悪)がみられる理由 
中野 重行

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プラセボを投与した際に、症状が改善したり、あるいは変化・悪化したりするのには、主に以下の5つの理由(メカニズム)が関係していると考えられている。

1.病態・症状の自然変動(自然治癒力を含む)

人間の身体には、本来「自然治癒力」が備わっている。病気や症状の多くは、特別な治療をしなくても時間の経過とともに自然に回復に向かったり、波のように良くなったり悪くなったりを繰り返す傾向がある。この自然な身体の変化が、プラセボを飲んだタイミングとたまたま重なることで、変化したように観察される。

 

2.暗示効果(期待効果)

「薬を飲んだのだから良くなるはずだ」という患者自身の期待や思い込みが、実際に心身の機能に影響を与え、症状を改善させることがある。逆に、「副作用が出るかもしれない」という不安が、症状の悪化を引き起こすこともある。

 

3.条件づけ

過去に「医療機関で薬を飲んで良くなった」という経験が身体に学習されていると生じる。「梅干しを見ると唾液が出る」のと同じように、プラセボであっても「薬を飲む」「治療を受ける」という行為自体が条件反射のスイッチとなり、無意識に身体の回復反応が引き起こされる。

 

4.観察時に生ずるバイアス(偏り)

症状の評価を行う際、医師や患者自身が「治療を受けているのだから良くなっているはずだ」と無意識に期待し、症状の変化を過大(または過小)に評価してしまう心理的な偏りのこと。

 

5.その他の要因

プラセボそのものだけでなく、治療に参加することで規則正しい生活(食事・運動・休息など)を意識するようになったり、医師との良好な関係から得られる安心感がストレスを軽減したりするなど、治療を取り巻く環境が症状に影響を与えることがある。
プラセボ投与時の変化は、これらが複雑に絡み合った結果として生じると考えられている。

図6 プラセボ効果(反応)に関与する要因.

[Rickels,K(1966)を参考に作成]

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