第1章 臨床試験の基礎知識とそのポイント 
9 臨床研究成績の統計解析 
9-3 臨床試験に必要な統計的考え方 
9-3-5 ランダム化、ランダム化割付 
井上 永介

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1.ランダム化

臨床試験で本当に評価したいのは、「ある患者が治療を受けた場合」と「同じ患者が治療を受けなかった場合」という2つの結果の差、すなわち治療効果(治療の因果効果)である。しかし、現実には、同一人物に対して両方の状況を同時に観察することはできない。このような考え方は反事実仮想モデルと呼ばれ、「観察できないもう一つの結果(反事実)」をどう推定するかが重要になる。臨床試験では、この見えない反事実を推定するために比較の方法を工夫する必要がある。

ランダム化とは、参加者を無作為に各群へ割り付けることである。治療群と対照群が平均的に同じ背景を持つようにする方法で、既知・未知を問わず背景因子の偏りを平均的に均等化することができる。これにより、2群は平均的に同等な集団とみなすことができ、対照群の結果を「治療群における反事実」の近似と考えることができる。すなわち、「もし治療群の患者が治療を受けていなかった場合にどうなるか」を対照群の結果で代用するという考え方である。この考え方のもとでは、群間差を集団における平均的な因果効果として解釈することができる。ランダム化は、この反事実の推定を支える重要な枠組みといえる。

     

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